遠い彼方からの呼び声-4

Published on 3 April 2023 at 05:31

 

 先日、上智大学の土手の桜を見に行った。

 先に上智大学のイグナチオ教会をのぞいてみると中に入ることができて、オルガンの練習をしていたのでしばらく聴いていた。このオルガンは、指揮者の小澤征爾さんがごく若い頃に聴いて非常に感動したという記録を残しているものである。曲は他の教会で聞かれるものとは違ったものだ。現代曲とも言えるが古い曲にも聞こえるような曲だった。高音域から低音域まで非常に充実した良い音だ。

 低音域は音が割れることなく非常に豊かである。「練習」ということで全体のボリュームは控えめにしてあるがこの空間スペースの規模のおかげで大ホールよりもむしろ印象深い、と言えるだろう。それも印象的だったが、おそらく小澤さんはこの多彩な音色と幅広い音域に感動したのではないか?小澤さんはコーラスもやっていてオルガンも少し弾いたとのことだが、このオルガンの音色はやはり人の声よりも純粋で色彩の幅が広い。声楽とはまったく違うものである。当然ながら、小さい足踏みオルガンともまったく響きが違う。そこに感動したのだろう。「ここのオルガンを聴いて音楽家になろうと思った」とのことだ。

 

 曲の感想だが、ところどころにギリシャ旋法的なものも聞かれるが、音色の選択の様子では「なにか北欧的なニュアンス」を感じるものだった。また、ふと見ると中央にある「キリスト像」のポーズがローマンとは異なる。これは以前に何度か訪れた時にも見ていたものだが、今日はオルガンと相まって印象的だった。・・・こうして考えてみると、ローマ帝国崩壊後に「キリスト教」というものを支えたのは明らかに北部の人々の情熱・精神である。しかし、その「情熱」のウラには「ガリアン、ゲルマンの先祖の霊」に対する意識がある。そのことは、今日のオルガンでも明らかである。・・・ローマ帝国領内では崩壊する西暦450年頃までの間にキリスト教に対する反対する大規模な動きが絶えずあり、ローマ崩壊後は中心地が移動してますます混乱していた。その中で、現在のフランス以北のガリアの地ではフランク王クロヴィスが人々を混乱から救い出したのである。そして「ガリア、ゲルマンの人々の神聖なる神々と霊」を巧みに「聖人化」することでキリスト教の裏にガリアとゲルマンの文化を守ったのである。今日フランス・ドイツ以北で演奏されている「教会音楽」はギリシャ系のグレゴリオと13世紀頃にフランスのギヨーム・ドゥ・マショーなどが発展させた音楽から発生したものだが、その中に、この「ガリア・フランク人、ガリア・ゲルマン人」の気持ちはふと垣間見ることができる。これは、ローマンのものとは明らかに異なるものだ。

 

(事情があってまだ東京に滞在中。)

 

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